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探偵物語・・・の巻

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ゆずが行方不明になったときの出来事です。
かなり回りくどい言い方だったり、何回もしつこく同じことを書いたりしているところもあります。でも、もしもこのページを読んでいる人で、今、一緒に暮らしている猫が行方不明で捜しているという状況にあったら、参考にしてもらいたいなって思ったので、そのときの状況や感情など、なるべく正確に書きました。ご了承下さい。

CHAPTER1 消えた朝

4月4日水曜日AM7:25
いつもの朝。この日はご飯を炊いていなかったので、顔を洗っている私に、きじクンが「パンでも買ってくるよ」と声をかけて家を出ていった。
5分程度できじクンが戻ってくる。パンが焼け、食べようとすると、うちのアパートから「おおおお!」(ホントは「こら!」だったのかもしれない)という大音声が聞こえてきた。

昨日友人の住むアパートに空き巣が入り、住人の一人が縛られたという話を聞いていたので、きじクンはすぐ家の鍵をかけた。そのとき私は何か違和感を感じたのだが、それが何なのかよく分からなかった。
「いやぁねぇ~。朝から」
「昨日の空き巣の話をきいてるから、なんか気持ち悪いね」

それから少し経って、私はゆずが全然鳴いていないことに気づいた。いつもはもっとおしゃべりをしているのに。
「ねえ、ゆずがいないよ」
「え?」
部屋中を探してみる。いない。どこにもいない。
さっきの大音声が甦った。まさか・・・

きじクンは外を探しに行く。私は階下の住人の家に行った。
「すみません、うちの猫ここに来ませんでしたか」
「あ、お宅の猫だったんですか。さっきうちの中に入ってこようとしたので、主人が大声を出して追い出したんです。そしたら、この塀から外へ飛び出して行って・・・」

嘘・・・ここ、二階だよ。二階からゆずは飛び降りたってこと?
「それで、どっちに行ったかわかりますか?」
「ここを飛び越えるのしか見てないから・・・」
心臓がバクバク言い始めた。慌てて二階から下を見たけど、ゆずの姿はない。

飛び降りたとすると、そこから直進で走って逃げるに違いない。
着地したあと U ターンをするなんてこと猫はしないのではないか。そう思って、飛び降りた先に広がる草むらを徹底的に探した。
隠れる場所はいくらでもある。

「ゆず~、ゆず~」
呼んでも返事はない。きっと今はパニックの極致なんだろう。返事はしないだろうなあ。
気がつくと 8:10 になっていた。携帯から同僚のれれちゃんに電話をした。
「ゆずがいなくなっちゃったの。見つかったら会社に行く。見つからなかったら今日は行かないから」
「わかった」

きじクンもあっちこっち探したが、結局見つからない。
「でも道路に死体は転がってなかったから、まだどっかに隠れているんだよ」
「うん。そうだね。速攻で私ゆずのチラシ作るよ。きじクンはもうちょっとこの辺探して」
きじクンに捜索を任せ、家に戻る。玄関を開けてもゆずが出てこない。

家の中に入ると張りつめていた糸が切れて、涙がポロポロ出てきた。
どうしよう。ゆずが居なくなっちゃった!このまま帰ってこなかったらどうしよう。
嫌な想像ばかりしてしまう。泣きながらパソコンの電源を入れた。ゆずのホームページに使った画像をチェックする。

外でゆずを見るとすれば、おなかを出してひっくり返っている写真じゃ意味がない。そんな格好を外ではするわけがない。
冬毛のゆずもダメだ。今はこれよりも毛が薄くなっているから、夏毛のゆず・・・。
なるべく遠目で見ても姿全体がわかるもの、顔の特徴がよく撮れているものを選ぶ。

あ、それから人に対して威嚇の表情をするかもしれない。
チャチャが遊びに来たときに撮った怒った顔のゆず写真も選んだ。

プリントしてみて家のプリンターが壊れていることに気づく。
黒が出ないのだ。画像のゆずは金色になっている。これじゃ色が全然違う。どうしよう。
会社に電話をして、れれちゃんを呼んでもらった。

「今から Word ファイル送るから、それをカラー印刷してもらってよい?
で、その印刷したものをバイク便で送ってほしいんだ。料金は私が払うから」
職権乱用もいいところである。でも今回は許して!!

れれちゃんは、忙しいにもかかわらず快く引き受けてくれた。メールでファイルを送ってあとは待つだけ。
きじクンが家に戻ってくる。
「どうだった?」
「だめ。全然いないよ。おれも今日は休むって研究室に電話しておくよ」
「今、れれちゃんに印刷頼んでいる。できあがったらバイク便で送ってきてくれるよ」
「その間にすることは何だろう」
「まず保健所に電話入れておかなくちゃ!」

本棚から【ねこだす】を取り出す。猫ちゃんお役立ちガイドである。
まさか迷子のページが一番最初に役に立つ項目になろうとは・・・涙がどんどん溢れてきた。

保健所に電話をする。まだ居なくなって数時間だから収容されていることはないだろうが、連絡しておいたほうが安心。ゆずの特徴を伝える。

それから動物保護センターに電話。こちらもまだ該当する猫はいないとのこと。
【ねこだす】に、「ペット探偵」のことが載っている。
「どうする?こーゆーのに頼んだ方がいいのかな」と、きじクン
「う~ん。頼むんだったら早いほうがいいよね、きっと。でもチラシつくって聞き込みしてみて、もうちょっと自分たちでやってみようよ。無理だと思ったら雇おう」
「ごめんよ。買い物行ったときゆずが出ていないか確認すれば良かった」
「仕方ないよ。私はあの叫び声が聞こえたときに何か嫌な予感がしたのを見過ごしたのがすごく後悔」

また泣きたくなった。
でもお互い落ち込んでいても仕方ないので、バイク便が到着するまでの間、外に出て探すことにした。

「捜査に行き詰まったときは現場に帰れ」

推理小説には必ず出てくる言葉。まずゆずが取ったであろう行動を推理することにした。
ゆずはきじクンが家を出たとき、するりと家を抜け出したに違いない。
それから階段を下りて 3F から 2F に行った。たぶんそこで、きじクンの帰ってくる足音にビックリして、慌てて家に帰ったつもりが、そこは 303 号室のうちではなく 2F の 203 号室だった。

家に入りたくて 203 号室の開いていた窓から部屋に進入しようとして住人に怒られて、玄関脇の塀から外へ飛び降りた。

塀を見ていたきじクンが
「これ、ゆずの足跡じゃない?」と言った。慌てて見てみると、それは単なる汚れだった。でも・・・
「きじクン、こっち。これ、ゆずの爪痕だよ」
くっきり 4~5 本の爪痕が塀の上に残っていた。

爪痕
ゆずの爪痕が斜め右側についているのが分かる?

飛び降りた塀
この塀を乗り越えて逃げたらしい

「この角度からいくと、ゆずはナナメ右方向に飛び降りたことになるね。
ねえ、きじクン。うちらはずっと、ゆずはまっすぐ飛び降りたって思っていたから右方向は調べてないよ」
「行ってみよう!」
右ナナメ方向に飛び降りて、たぶん猫の習性から行ってそっから直進だろう。そうするとすぐに道路に出る。道路に出て、行ったのは右か左か・・・最初の選択肢。

道路の向かいに数件家があるのでそこをフラフラしていると、おじさんが出てきた。
「すみません。朝うちの猫が逃げ出しちゃったんですけど、心当たりありませんか?
茶色い毛の長い猫で、このくらいの大きさで(手を広げてみせる) 6kg くらいあるんです」
「猫ねぇ・・・あ、そ~いえば朝見たよ。でかい猫が歩いてた」
「え、何処をですか?」
「この道をこっちにテクテク歩いていたよ」

こっちというのは、塀を右ナナメ方向に飛び降りてから道路に出て右に行ったことを指す。
「それを見たのは何時頃ですか?」
「朝の 7:30 頃だったかなあ。毛が長くて、茶色い猫だろ?なんかずいぶん大きな猫だな~って思ったんだよ」

時間も一致する。たぶん塀を飛び降りて歩いたばかりのゆずをおじさんは見たのだ。
「ありがとうございました!」

それからゆずが歩いたハズの道を行くと、突き当たり正面は工場と民家。道は左右に別れる。
ここから、どっちへ行った・・・?
正面の工場は殆ど人がいなくて、フェンスで囲まれている。中に入るのは難しそうだ。工場と民家の隣接部分には細い隙間があって、草がボウボウ。猫が隠れるのにはちょうど良さそうだ。

「ゆず~、ゆず~」
でも返事はない。目を凝らしても、ゆずらしきかたまりもない。
もし道を左に行けば駐車場。右に行けば、倉庫と総合病院。もし病院の敷地内に入られると探すのは困難かもしれない。
しかも左右どちらも車の行き来が激しいのでかなり不安。しかもこの辺はトラックが多いうえに環七が近い。

民家の庭に入れてもらおうかと思ったが、まずチラシを作って、それを渡しながら入れてもらった方が良いかもしれない。そう思って、駐車場を探すことにした。
車の下をのぞき込むが、ゆずの姿はない。どうしよう、ゆず、どこにいるの?

そのとき携帯が鳴って、バイク便がそっちに向かったよ、というれれちゃんからの連絡。
疲れていたので、バイク便が来るまで家で待つことにした。
部屋にある脱ぎ捨てた服のかたまりがゆずに見え、悲しくて泣き始める私。
きじクンは自分を責めて「ごめんね、ごめんね」を繰り返す。

バイク便が到着。
印刷されたものはバッチリゆずの特徴がわかる出来栄え。さっそくコンビニでカラーコピーをした。
とりあえず 90 枚。近くのスーパーと薬局に貼ってもらうように頼んだ。ついでに咳が出始めていたので薬も買う。

作ったちらし
近所の人に手渡ししたちらし

お昼はとうに過ぎていた。ゆずはまだパニック状態だろうか。
人が集まるところの掲示板に貼らせてもらおうと思ったので、歯医者、接骨院など地元の人が集まるところに行ってお願いをした。

それから民家をまわる。平日の昼間は案外不在の家が多いことを改めて知る。
不在のところはポストに入れようと思ったけど、電話番号も入っているからやっぱり手渡ししたい。
工場と隣接している家を一軒ずつ回る。3 件目でおばさんがチラシを見て言った。

「あら、この猫朝見たわよ」
「え、どこでですか?」
「ゴミ出しに行ったとき、この通りにいたわよ。悪いけど汚い猫ね~って思っちゃった」
「時間は?」
「 7:40 くらいかな」

やっぱり脱走直後の情報。最初にゆずを見たおじさんと今のおばさんの情報を合わせると、ゆずは工場付近に居たことになる。
この周辺が怪しいのかな。でもフェンスがあって猫は入れない。民家との隣接した隙間を通って向こう側のブロックに行ってしまったのだろうか。

その後どっちに行ったのかが全くわからない。

ちらしを配りながら聞き込みをしたが、その後ゆずを見たという話は聞けなかった。
猫がよく通る道や、集まる場所は聞けたが、脱走一日にしてそんな場所に、ゆずが現れるとは思えない。手がかりがないまま、日は傾いていく。

茂みを見つけてはゆずを呼んでみた。でも返事はない。物音ひとつ聞こえない。

工場まで戻ってくると中に人が居たので、頼んで入れてもらった。
タイヤやチューブが散乱していて、かなり足の踏み場が悪い。でもその分猫が隠れるのにはもってこいの場所。
フェンスを注意してみると、所々穴が開いていて、猫が出入り出来ることが分かる。ゆずもこの敷地内に入っただろうか?

「野良猫は、よくフェンスの向こうの塀を伝って歩いていくよ」と工場のおじさん。
「塀を伝った先に、猫のご飯がおいてあるところがあるんですよ」と、きじクンがチラシを配ったときに聞いた情報を話す。
工場内を探したけど、ゆずの姿はなかった。

猫の餌があるたまり場に行ってみたが、ゆずは見あたらず。
そこの近所のおばさんが「猫の鳴き声が聞こえたよ」と教えてくれたので聞こえた辺りを探したけど、ゆずはいなかった。

16:00
私たちの力はここが限界かもしれない。
「きじクン、探偵さんに連絡しよう」

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